これからの情シスのあるべき姿

2018年8月22日

今年度のPCNW大会のテーマは「これからの情シスのあるべき姿~クラウド時代に求められるIT戦略~」というテーマで、筆者がモデレーターを務めパネルディスカッションを行った。そこで今回はパネルでの議論を踏まえながら、情シスの目指す姿についてお話したい。


<パネルディスカッションの様子>

皆さんは「情シス不要論」という言葉を聞いたことはないだろうか。デジタル時代の真っただ中、「情シスはもういらない」といった「情シス不要論」が一部で囁かれているという。本来、デジタルトランスフォーメーションの中心にいるべき情シスが、実は蚊帳の外に置かれているのだ。デジタル化推進役としてのCDO「Chief Digital Officer」なる役員を外部から招く企業が増えているのも、情シスの地位が相対的に低下しているからではないだろうか。

IT部門はビジネスを知らないし、お金ばかり使うがその効果は良くわからない。ビジネス部門がIT部門にやりたいことを相談しても、セキュリティを盾にNOとしか言わない。既存システムの保守・運用にかかりきりで、現場に行かずに閉じこもりがちなIT部門。そしてなんといっても、上流までITベンダーに依存してしまう「丸投げ」体質で、何をやっている部署なのかと経営陣はIT部門に不信感を持つことになる。


<パネルディスカッション投影資料より抜粋>

だからといってIT部門を無視してデジタル化を進めればいいのだろうか。IT部門に相談するとややこしいので、ビジネス部門が直にベンダーとやりとりしながらシステム導入することは、昔からあったことだ。ただこうしたケースは、最初は良いかもしれないが、最後はうまくいかない。既存インフラやセキュリティとの整合性、そしてシステムの運用・保守、そしてその体制までをちゃんと考えてないからだ。さらにビジネスが拡大すると共に、基幹系との連携が必要になりIT部門の協力が必須となる。

やはりIT部門が主体となってデジタル化も推進していくべきである。そのためにはIT部門は経営やビジネス部門から信頼される部門へと変わらなければならない。まずは実力をつけ、ベンダー丸投げから脱却して内製の方向へ舵を取るべきである。そして、ビジネス部門と一体となり成果を上げることのできるIT部門へと変身しなければならない。

そのためにIT部門は以下の実践が必要だと筆者は考える。

①上流(超上流)をIT部門でしっかりと行えるようにビジネスアナリシスをしっかりと学ぶ。
②SoEの新たな開発のスタイルであるアジャイル開発やDevOpsを導入する。(すぐに無理なら準備をする)
③IT部門の体制を強化し、カバーする領域を拡大しながらビジネス全体に横軸を刺せるようにする。

①を実践することでビジネス部門の信頼を勝ち得て、その連携もスムーズになるだろう。なお②を実践する上でクラウドは必須である。クラウドの活用は、なんでもスクラッチから開発するのではなく、すでにあるものを繋げてうまく活用するという新たな文化をもたらしてくれる。また③の実践のため、もしIT子会社を持つ企業であれば、それをインソースすることも検討すべきだと思う。これから優秀なソフトエンジニアは企業の宝となる。IT子会社の優秀なエンジニアを選りすぐり、IT部門の管轄下でビジネス部門に派遣しては如何か。これからのIT部門はビジネスと一体となることで評価されていく。だからこそ、これまでの保守的で受け身の姿勢から、積極的にチャレンジし、ビジネスを支えるITを提案できる部門へと変わらなければならない。

デジタル時代に日本の企業が生き残っていくためにも、IT部門こそがデジタルトランスフォーメーションのリーダーシップをとる必要がある。IT部門はそういう使命をしっかりと自覚して、ぜひとも新たな一歩を踏み出して欲しい!

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

寺嶋 一郎 PCNW幹事長
TERRANET 代表

1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。

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