オフィス移転プロジェクトを終えて

2021年4月1日

コロナ禍でオフィスの使われ方も変化が起きているようですが、そんな中、勤務先のオフィスの移転を行いました。

情報システムの立場でオフィス移転に携わったことは何度かありましたが、レイアウトの設計や構築までも担当するのは初めての事。最初は正直不安だらけでした。

しかし、これまでの経験プラス、PCNWで見学させてもらったクオリティソフトさんリコーさんのオフィスを思い出し、何とかやり遂げる事ができました(見学は本当に役に立ちました)


オフィスコンセプトはSYNC UP

1.「移転先決まったよ」
コロナ禍前から探していた所属部門の移転先が決まったのは、1回目の緊急事態宣言が明けた頃でした。それまでは内覧に同行するくらいでしたが、鼻の上までどっぷりとオフィス移転プロジェクトに浸かった瞬間でした。

2.課題や期待
今回の移転は、単にオフィスが手狭になったという理由だけではなく、別のビルにいる2つのIT関連部門を1つに統合することによるシナジー効果の最大化が狙いにありました。しかも、世間はコロナ禍。課題や期待は多かったです。

・IT部門特有の課題(セキュリティ強化、システム監視、障害対応など)
・経営層からの課題(出社率想定、ニューノーマル対応、先進的なオフィスへの期待など)
・部門からの課題(レイアウトやデザインなど)
・業務内容による制約(固定電話や有線LANの利用、作業場所の確保など)

上記に加えて、オフィスの席数、会議室の数、壁などの物理的・法的な制約、そしてもちろん予算の制約。
オフィス移転プロジェクトとは、これらを全て取りまとめ、全てを納得できる範囲に収めることそのものでした。

3.オフィスのイメージ
私たちが導き出したオフィスのイメージは次の4つです。

・ABW(Activity Based Working)(※1)
・在宅とオフィスのハイブリッド勤務
・Web会議の活用
・三密回避対策

このイメージと執務・運用室の要件を持って什器メーカーなどに声を掛け、ショールームも見学し、コンペ先を絞りました。


エントランスでは「こみゅちゃん」が応対

コンペはZoomを使い、プレゼンと質疑で持ち時間90分の真剣勝負です。多少意見は割れましたが、最終的に話し合いによって1社に絞りました。

4.誤算
発注先はこの時、コンペに提出したレイアウトにより、すぐに構築に入る事ができると考えていたようです。
しかし、私たちはここから手直しが必要と考えており、次々と変更要望を出しました。

席数や会議室の位置、間仕切や什器類の仕様など多岐にわたり、それは最終期限の直前まで続きました。中でもインパクトが大きかったのは、予定したマシンルームの場所の配線ルートが狭く、ようやく収まった各部屋のレイアウトを変更せざるを得なかったことです。本当にタフな交渉が続いた期間でした。
最終的に予備日は使い果たしましたが、概ねスケジュールどおりに収まりました。

5.コストパフォーマンスで見るオフィス構築
当初のデザインやレイアウトから変更したものもありますが、オフィスは当初のイメージを損なわずに完成したと思っています。皆さんがオフィスを構築する時の参考にしてください、少しだけお安くオフィスを構築できるかもしれません。

1)ガラスを減らす
エントランスや会議室を構成するのに、スチールのパネルに比べてガラスは高くつきます。
見た目の良い2重ガラスや連窓ガラスは高価です。単板の枠付きガラスは比較的安価です。
全面ガラスから腰上のみに変更するなど、ガラスの総量を減らすとコストを抑えやすくなります。

2)オープンレイアウトで消防設備の増移設を減らす
ビル設備であるスプリンクラーや火災報知機、非常放送スピーカの増移設は通常B工事(※2)になり、特にスプリンクラーの増移設は費用が嵩みがちです。オフィスのコンセプトにもよりますが、できるだけ間仕切を減らしたオープンなレイアウトを考えます。ビル管理会社や管轄の消防署に相談し、今回の例では、隣り合うスプリンクラーの中間に間仕切を設置するレイアウトや、間仕切の上部を天井から500mm開口するなど、ビル設備の条件と照らし合わせて増移設の最小化を工夫しました(※3)

3)部材を支給する
工事をする会社がOKすればですが、部材を支給する事で費用を抑えられる可能性があります。今回、PCの画面をモニターに映すため、HDMIの延長装置やワイヤレス装置を多数使用しましたが、A社で取り扱える機器は高価であったため、比較的安価な物を別途調達して支給しました。これによりHDMI関連機器のコストを抑える事ができました(※4)

4)原状復帰の費用も考慮する
自社ビルであれば関係無いかもしれませんが、退居時にかかる原状復帰費用を抑える事も考慮しましょう。ダウンライトは雰囲気抜群ですが、天井に穴をあける事になり、退居時には天井材を新しくする必要があります。前述した消防設備や、空調出口の移設も元に戻す必要があります。

5)デザイナーさんとは徹底して調整する
什器メーカーのデザイナーさんは、製品の仕様や価格を知り尽くしています。安い製品を探してくれるかもしれません。また、特にこだわる部分以外はデザイナーさんにお任せしたほうが、美しいオフィスができると思います。とはいえ「こうしたい」は積極的に言いましょう。「金額上がらないですよね?」も忘れずに。


6.新しいオフィスに入居して
新しいオフィスのコンセプトは「SYNC UP !」です。

SYNC UP !
 シンク・同調する・一致する
 ここのオフィスに来れば、常に最新のマインドにアップデートされ、
 DX・CX・企業・組織・個が「SYNC UP !」しあい、
 新たなアイデアを創出する、生産性が向上する。
 SYNC UPする為の活動に特化した環境。




社会的距離を確保しながらも対話しやすい机配置




全席に感染防止用アクリルパーティションを設置




オンラインミーティング専用ブース      




健康を意識し業務に集中できる昇降デスク

入居後は、ブラインドの増設など何点かの手直しはありましたが、それ以外は大きな不具合も無く快適です。会社ホームページでも紹介された他、採用向けの撮影に使われ、メディアからの取材依頼まであるとか。担当者としては嬉しい限りです。

コロナ禍で皆さんに直接見ていただく事は難しいですが、以下のホームページに紹介動画があります。
宜しければご覧ください。
https://www.k-evolva.com/news/detail20210208.html

PCNWでは、上記の本文中にあるようなオフィス見学をはじめ、皆さんの業務に役立つ活動が多々あります。
今はオンライン中心ですが、外の方との触れ合いは、きっとあなたの貴重な経験になるかと思います。是非、勉強会にご参加ください。

最後まで拙い文章を読んでいただき、ありがとうございました。

※1:働く場所を活動から選ぶという考え方。
※2:借り主側の要望により、オーナーの権限で行う工事。
※3:当てはまるかどうかはビル管理会社や管轄の消防署にご確認ください。
※4:機器の保守は自社対応になるので注意が必要です。

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

関野 博之 株式会社KDDIエボルバ
サービス開発本部 事業統括部 統括G

平成の元号と同時に公共系企業のソフトハウスに入社。IBM系ホストコンピュータのプログラマを経て、社内LANやPCを担当する情シス部署に異動。2000年の元旦はシステムの稼働確認と共に迎える。
その後インフラ関連のSEを経てコールセンター運営会社に出向、転職。会社吸収合併を経て現職。初めての経験も多く、50歳過ぎて悪戦苦闘中。PCNWには2016年より参加。

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